*初出:TH3EE DAYS AWAY #16

こんにちは、はじめまして。ドウドウといいます。
自分は拙いながらもサイトを運営しておりまして、
その中の1つはUKメロディックと呼ばれるバンドを扱っています。
この度、ジュンさんからth3ee days awayのfanzineで
文章を書いてくれないかという身に余る栄誉を賜りましたので、
駄文、拙文になるのは覚悟の上で、何某かの文を綴っていきます。

自分が運営しているサイト、The Best Punk Rock In Englandにおいて
当該語句を乱発しておきながら、こういう事を書くのは如何にもアレですが、
自分は“UKメロディック”という言葉を完全には信じていません。
その理由の1つには、現在となっては“メロコア”という言葉が
忌諱すべき語句となってしまったのと同じ物を感じるという事があります。
自分はメロコアの全盛時代をドップリと体験した事を契機として
UKメロディックなる(暗黒的)安息の地を見つけた経緯があるから
メロコアという言葉を殊更に否定したいとは思いませんけど、
やはり積極的にはその語句を使いたいと思わないのも、また事実なのです。
幸い、といっては語弊がありますが、UKメロディックという語句は、
メロコアのように一般層に浸透する事がなかったので、
今でも記述する事に取り立てて抵抗がないだけなんじゃないか、と。

また、UKメロディックという語句を完全に信頼していないのは、
その語句が示す意味に広義でいうところと狭義でいうところで
いささかの乖離を感じる事も大きな要因となっています。
自分の勝手な定義によると、広義のUKメロディックとは、
イギリスのバンドであり(UKメロディックというくらいですから)、
初期のSnuff、Leatherface、Mega City Fourなどからの影響が顕著で、
上記のバンドと音楽的フィールドを共にする物という事になります。
対して、(独善的にも程があるような定義ですが)狭義でいうUKメロディックとは、
ズバリ、Broccoli、Drive、Hooton 3 Carのような音を鳴らすバンドとなります。
少しショボくて地味な感じは否めないものの、不思議と何度も聴きたくなるような。
現在も活動を続けているバンドの中で、そういう音を鳴らしているのは
Dinaが辛うじて該当するくらいでしょうか(*注:現在ではDinaも解散してしまいました)。
そういった意味においても、Ropeの解散は如何にも残念です。
こういうバンドが自分達の耳に入る機会が少なくなっている事が
よく“近頃のUKメロディックは元気がない”と言われる原因なんでしょう、きっと。
蛇足になりますが、自分のサイトで紹介しているバンドの多くは
広義でのUKメロディックの意味に依っているという事になりましょう。
イングランドと銘打ちながら、幾分かウェールズやアイルランドのバンドも
混じっているのは、どうぞ愛嬌という事にしておいて下さい。
その矛盾はサイトを始める前から気付いていたんですけどね…

Vanilla Podというバンドがいます(2004年の暮れには日本盤でアルバムをリリースしました)。
Goober Patrolのメンバーが参加していたり、初期にはSpeedowaxからのリリースがあったり、
Leatherfaceが来日した際にはフランキー御大がライブでVanilla PodのT-シャツを着ていたりと、
先に述べた広義のUKメロディックには充分に当てはまるかとも思えるのですが、
彼等の音源を聴いてみると自分には丸っきりメロコアに聴こえてしまうのです。
逆に、日本が産んだ不世出のバンド、The Last Last Oneの7"EP「Get Wet In The Rain」などは、
“イギリスのバンドだからUKメロディック”という枠を取っ払っちゃえば
まさしくUKメロディックに他ならない音を鳴らしている訳です。
言葉は現実という大きな食材を盛り付けるには余りに小さな器だ。

こういった言葉の意味するところの乖離が次第に発展していく事で、
先に挙げた“メロコア”という言葉が、そのまま十把一絡げに
ネガティブな意味合いを持つという状況に陥ってしまったんじゃないでしょうか。
もちろん、一部でメロコアをダサい言葉にしてやろうという恣意的な動きもあり、
それが見事に功を奏したなどといった部分も無視できませんけど。
メロコアをダサいと言えばカッコ良いとでも思っているのか。
まぁ、斯く言う自分もサイトでは“UKメロディック”のみならず、
“哀愁”などという便利な言葉をバカみたいに頻繁に使っているので、
そういった点に関しては反省しなくちゃいけないなぁとは思いますが、
だからと言って、それらの言葉をタブーとするのは決して望ましい事ではありません。
その言葉を使わなきゃいけない、もしくは使った方が好ましいような場合においても、
その言葉を使うのが憚られるという状況こそ、自分が何よりも怖れている事なのです。

言葉とは実に不自由な物です。
この文章だって自分が言いたい事が十全に伝わるかは大いに疑問ですし、
それ以前に言いたい事を上手に表現できているのかすらも分かりません。
繰り返しになってしまいますが、もう一度書かせて下さい。
言葉は現実という大きな食材を盛り付けるには余りに小さな器だ。
そして、その小さな器ですら満足に使いこなせていない自分がいる。
でも、そんな諸々の不十分性を自覚した上でも、なお声を大にして言いたい事があります。
UKメロディックにはカッコ良いバンドがたくさんいますよ、と。

Take it back, it's too late to say those words.